臨床の実践と研究


質心・心理士ワークショップ。
ひやひやしていたが無事にポイント獲得。よかった,よかった。


臨床心理行為をよりよく記述するための質的研究法というテーマだったので,心理士が質的研究法を用いて自分の実践をどう記述し研究したらよいかが話されるのかと思ったが,そうでもなかった。
講演は,従来の心理臨床教育や事例研究法への批判やGTの解説が主だったし,シンポも,実践者による臨床実践の分析ではなく,研究者が他の実践者の実践について分析したものだったり,研究者として病者の体験を分析したものだったりした。
とはいえ,質的研究法を用いているため,クライエントや病者に対峙し,彼らの体験に迫っており,その行為は実践に影響を与えたり実践そのものであったりもしていた。
要は,質的研究法をとることで,実践と研究の間を行くことができるのだと思う。


では,自分の実践そのものを研究するにはどうしたらいいのか?
それはやっぱり事例研究法しかないんじゃないか?
最後までそれが疑問だった。


教育の世界では,教師の実践報告と研究者の実践研究は区別されているように思う。臨床の世界でも,臨床家の実践報告と研究者の実践研究が区別されればよいのかもしれない。教師の実践報告が,各時の授業計画と実践記述から成る独特の形態をとるように,臨床家の実践報告も各セッションの記録から成る事例記述という形態をとるというわけだ。


ただ,教育の世界では心理学者が実践の場に出かけて観察・記録・研究するのに対し,臨床の世界では臨床実践の場に誰かが入って記録・研究するということが少ないように思う。それはクライエント−セラピスト関係を守るためでもあったのだろうし,セラピストが自分の実践を振り返ってまとめ受け継いでいくということが重要視されるためでもあるだろう。
実際,今日岩壁先生が発表されたような研究(初回面接後クライエントにその体験をインタビューするという研究)はあまり見ない。新鮮だった。これぞ研究者による実践研究という感じ。こういう研究がもっと増えたらいいのかもしれない。クライエントやセラピーに与える影響もいろいろあるので考慮すべきことや難しいこともたくさんあるとは思うけれど。


というわけで,臨床心理学の研究方法論に関わる,思ったより大きな話になったが,自分なりに臨床と研究について見直すことができておもしろかった。