病い体験振り返り

ようやく熱が完全に下がり,やっと起きていられるようになった。
下がるとなるとひゅんっと下がり,なんだか拍子抜けである。
こうなるとついつい動きたくなり,洗濯をしたり,部屋の片付けをしたり,
市役所→免許→銀行口座開設と出歩いてみたり,あれこれ買い物をしてみたりする。
買い物といっても,数日ウィダーインゼリーか雑炊しか食べられなかったので
食べ物への欲が旺盛で,あれこれと主に食材を買い込む(笑)。
今日はついに勇気を出して肉じゃがと野菜炒めを作って食べてしまった。
おなかがどうなるのか,こわい。


さて,今回の病い体験(というほどでもないかもしれないが)を振り返ってみたい。
私はこれまで大きな病気はしたことがない。
だから40度の熱など初めてだったし,おなかの激痛が治まらないのも初めてだった。
これまでにない身体感覚を体験した。
汗だくになったり,ぶるぶる震えたり,自分の身体がコントロールできない感じ。
何だか身体が膨張しているようで,自分の身体を自分の身体と感じられない感じ。
瀕死の人が幽体離脱をする,などというのも何だか分かるような気がした。
でも重病の人は今回の私どころではない苦しみを長いこと体験しておられるわけで
それを思うと本当に,本当にしんどいことだと思う。


今回,病院の救急に行ったのも物心ついてから初めてだった。
ちょうどその日,近隣の病院がどこも休診ということもあり,
次から次へと救急の部屋へ人が来ていた。
やっと私の名前が呼ばれていくと,男性の医師。
頭が朦朧としていたので年齢などはよく覚えていない。
いつも自分が予診で聞いているように
自ら症状の経過を具体的に順を追って話そうとしたのだが,
ほとんど詳しく聞かれず,既往歴とか妊娠の有無とかいわゆる基本事項のみ。
「熱が39度ですね。インフルエンザはもう下火だけど一応検査しましょう」
「熱を下げるにはよく水分をとってくださいね」
そしてインフルエンザの検査。また鼻の奥に綿棒入れるんだよね,と覚悟していると
鼻の周りをするするっと綿棒で触って終わり。
しかも前のときは即結果が分かったのに今度は20分掛かるという。
ポカリを飲みながら待つこと30分。
名前を呼ばれて行くと
「結果は陰性でしたが,簡易検査なので,きちんと検査をしたら陽性かもしれません。
 おそらく何かの感染症でしょうが,詳しくは明日また受診してください。
 とりあえず,熱さましの薬と,一般的な風邪薬と胃の薬,いりますか?」
もらっていった薬は全く効果なく,熱はどんどん上がり,
翌朝,別のもっと近い病院を受診したのだった。


この医師。言葉使いや言葉の調子はわりと優しく,悪くないのだけれど
患者としては,何か納得できないものを感じてしまう。
患者としては,この症状はなんなのか,どうなるのか,不安を抱えて受診している。
それに答えてくれないとやっぱり不満だし不安がますます募る。
いくら言葉が優しくても「明日また受診して」「とりあえずこの薬?」とか言われると
どうしても「救急ではちゃんとは診れないんですよ。それが当たり前」と
言われているみたい。確かにそうなのかもしれない。
でも,それを患者に感じ取らせずにおくべきではないか?


臨床の師匠に以前,いわれたことがある。
「あなたたちは本当に鈍感!
 患者さんはみんなあなたたちよりずっとsensitiveですよ。
 そんな応対していたらすぐに信頼なくしますよ。
 言葉には気をつけなくてはいけないし,もっとsensitiveになりなさい」と。
患者がいかにsensitiveか,身を持って感じたように思う。
この体験を臨床に活かそう。