心理査定の論文

帰ってきてから何だかボワンとしていたのだけれど
仕事をこなしたりしているうちにようやく戻ってきた。


さて,こんな論文をもらってきた。
最近は各種病理や療法の勉強が中心でテスト系は勉強不足だったので
久々に勉強した。

藤田宗和・井原成男 (2005) 心理査定における心理テスト再考:『「心理テストはうそでした 受けたみんなが馬鹿をみた』に対して. お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要, 7, 75-84.

あの本への反論がきちんと述べられている。
はじめに藤田論文として,
心理テストの位置づけ,心理テストの有効性,心理テストの妥当性と信頼性を論点に
反論が述べられ
後半はそれをもとにした藤田・井原の対談。
具体的には,村上氏の著の論理展開の強引さに加え,
以下の3つの問題があげられ,それぞれについて詳述されている。

1.心理テストは心理査定を行う際の1つの道具であり,著者は心理査定という文脈での心理テストを位置づけていない。
2.著者は心理テストの有効性について,心理テストは当たらなければ意味がないと言っているが,著者の当たるとは,一体何を指しているのか,すなわち外部基準が不明確である。あるいは「当たる」の意味づけが極端に一面的である。
3.また心理テストの妥当性,信頼性をいわゆる心理測定的な視点,つまり統計的な問題としてのみ議論しているが,心理テストは心理測定的な視点からのみ妥当性,信頼性を捉えるものではない。 (P.76)

心理査定はあくまでも治療に役立てる目的で行うものであり
その目的に応じて心理テストは解釈される。
その根本的なところを改めて確認できた。
一方で,得られる豊かな情報をザルのように見逃してしまわないように
そして自分がどの角度からどう見ているのかを自覚しつつ解釈していけるように
道具を使いこなす力をもっと身につけなくてはと思った。