日精診の研修会。

クリニックが企画している日精診の研修会のお手伝いに朝から出かける。
質心など研究室の仕事で培ったスキルの見せ所!と張り切って行ったのだが
そこにはうわてがいた。
製薬会社の人たち。
彼らの気の利くことといったら!
お医者さんたちってこういう人たちと付き合っているのかぁなんて思ってしまった。
同時に,研究者人生に足を踏み入れてから
一般社会のデキる人と仕事をすることが少なくなっていたので
社会には優れた人たちがいるのだなぁと妙に感心してしまった。


・・・それはともかく。
研修会のテーマはチーム医療・地域リハビリテーション
お手伝いをしつつもしっかり講演は聞かせていただいた。


1つは,家族療法のものの見方(楢林先生)。
わりと基本的な内容のお話だったけど,
個人的には今,家族療法をもっと勉強したいなぁと思っていたところだったので
勉強になった。
悪者探しをせず,行動の連鎖を見出し,悪循環を断ち切る。
治療者自身も含む交流パターンを考察する。
このあたりは家族療法の基本だけれども
いざ自分でやろうとするといつの間にか原因探しをしていたり
自分自身も巻き込まれていて
うまく実践するのは難しい。


2つ目は,認知症ネットワークのお話(藤本先生)。
特に若年認知症・軽症認知症デイケアの話がとても面白かった。
社会参加を強く望む彼らに,自ら活動を一から作っていってもらう。
スタッフは様々な準備や配慮はしつつも,懸命に口を出さずにサポート。
エピソード記憶の強化,実行機能の強化,注意分割機能の強化になるという。
面白いと思ったのが,
10人いれば一人くらいは前回の話し合いのことを思い出して
「そういえば何か作るんやなかったっけ」と言い出し
「そうだったっけ,記録ノート見てみよう」と活動が展開すること。
元会計士が出納帳を付け,交渉上手の人が自然と上手に値切る係になっていること。
集団の力と個々の力が非常にうまく生かされている。
患者さんたちの力はもちろんのこと,
その影でサポートをしているスタッフの力を思うと感心する。


3つ目は,発達障害支援ネットワークのお話(十一先生)。
扁桃体とPapezの感情回路という脳の器質的な問題に触れつつ,
しかし発達障害の場合(特に今回はPDDについてだった)
同じ器質的な問題である精神病や脳損傷とは全く違うアプローチが必要であること。
「対人相互的反応性」ということの分かりにくさ。
パニックや知覚過敏等々,診断に直接関係しない様々な問題があること。
社会的撹乱にとても敏感だということ。
話を聞いていて「ナルホド!」「そうそう!」というのの連続。
今思うと私が最初にDSMでPDDの診断基準を見て理解できたことは
ほんのわずかだった。
あの基準で彼らの世界を理解するのはなかなか難しいと思う。
もっとも,どの障害だって本を読んで分かるレベルのことと
実際に患者さんにあって分かることには違いがあって
両方が必要なのだけれども。
最後に「ネットワーク」に触れて
「血が通う前にシステムを作っても機能しない。
 無理に枠組みから作らないこと。
 ケースの感触から作っていく。」というお話も
当たり前といえば当たり前なんだけど,「ほんとにそうだよなー」と実感した。


いや,ほんと刺激的な時間を過ごすことができた。
明日に続く。